「良い面もあるだろうし、(先発予想が)駆け引きという考え方をする監督もいらっしゃる。難しい。簡単には言えない」(3日/阪神・和田豊監督)
「賛否両論あるだろうが、うちの事情から言えば、もし観客動員に繋がるなら、やってもいいという思いはあります」(同/東京ヤクルト・小川淳司監督)
「いいじゃないか…。反対する理由はありません」(同/広島・野村謙二郎監督)
「世論、メディアも含めてファンの人たちなど現場じゃない声も聞いてみたい気がする」(4日/巨人・原辰徳監督)
当事者となるセ・リーグ6球団のなかで、中立的な物言いをする監督もいたが、今のところ、『反対』を唱える声は出ていない。
「要するに『保険』ですよ。どのメディアも指摘していますが、先発投手を予告することでお客さんを呼べるという考えによるもの。どの球団も『年間指定席』の売上げが落ちていますし、先発投手を事前告知することでテレビ放映も取れるのではないか、と考えたわけです」(前出・球界要人)
加藤良三コミッショナーは巨人キャンプを視察した4日、「私個人の意見は持ち合わせていません」と明言を避けたが、「導入の方向」で意見調整しているのを知らないはずがない。昨年の震災による開幕日の調整で混乱した際もそうだったが、連盟会長職がなくなった以上、イニシアティブを握れるのはコミッショナーだけである。ファン拡大のためにも持論を述べるべきだと思うが…。
セ6球団が『予告先発』によるサンプルとして取り上げたのは、昨年9月9日の『東北楽天対北海道日本ハム戦』。田中将大と斎藤佑樹の投げ合いにより、チケットが完売しただけではなく、テレビ中継も緊急決定されたのは記憶に新しい。『田中対斎藤』と同じ効果までは期待できないが、有名・人気投手の出場(先発)、タイトル争いの佳境にある投手の登板が明確にすれば、観客減を食い止めるくらいは出来るだろう。
こうした一連のセ・リーグの動向に対し、オリックス・岡田彰布監督は「珍しいわな。セがパのやることに合せていくというのは…」とコメントしていたが(3日)、これにはDeNA社の球界参入も影響しているという。
「中畑清監督のパフォーマンスによるところも大きいが、プロ野球界のオフの話題は横浜DeNAが占拠したと言っても過言ではありません。某球団はベイスターズの売却を『明日は我が身』と捉えており、親会社に出資する外資系産業に球団の赤字経営を快く思っていません」(前出・要人)
チケット販売収益を挙げたいとする切実な思いもあるだろうが、今回の予告先発制導入の動きは「売却という有事」に備えた市場拡充との見方もされている。
「DeNA社に限らず、球団買収(売却)の話し合いが始まると、買い手側が驚くのはチケット販売に関してなんです。販売ルートが拡張されていないうえに、昭和50年代から販売システムのほとんどが変わっていません。もちろん、各球団とも努力していますが、一般企業から見れば、首を傾げたくなるような経営システムなので…」(前出・同)
DeNA社はプロ野球による宣伝・広告を実感しているという。プロ野球の主な支持層は30代後半とされ、同社本業のケータイゲームの利用者層とは異なる。球界参入を会社の知名度アップ、事業拡充の契機と考えれば、第2、第3のDeNA社も現れるだろう。予告先発制の導入には100%反対ではないが、球界がヘンな方向に流れていかなければいいのだが…。