2013年、『16人のプリンシパル deux』大阪公演2日目の夜のこと。斉藤はメンバー達と食事を終え、部屋へ戻るためホテルのエレベーターに乗った。その時、他のメンバーの部屋があるのは16階だったため、そこで斉藤以外のメンバーは降り、彼女は自室がある18階へ上った。だが18階に到着し、ドアが開くと、そこは明らかに他の階とは雰囲気が異なり、異様に薄暗く不気味な空気が漂っていたという。フロアの構造や置物などは同じだが、なぜか各部屋のドアは1枚もなかった。怖くなった斉藤は慌ててエレベーターへ戻り、もう1度、18階のボタンを押した。するとメンバーと別れたのは16階なので、彼女は16階以上にいるはずが、エレベーターの数字は1、2、3、4と順に表示され、なぜか1階から上りはじめたのだ。そして再び18階に着くと、そこは先程とは違い、明るい普通のフロアだったという。
またこの夜の事を、メンバーの深川麻衣もブログに綴っている。その夜、深川がホテルの部屋で寛いでいると、斉藤が血相を変えて飛び込んできたという。斉藤から事情を聞いた深川は、真相を確かめるため同じ部屋にいた橋本奈々未の3人で再びエレベーターに乗った。そこで彼女達はロビーのある1階から順にエレベーターのボタンをすべて押したそうだが、すでに時間的に客室以外のフロアの階は行けなくなっており、押せるボタンは5つくらいだった。念のためそれらの階をすべて確認したものの、斉藤が目撃したような異様なフロアは結局見つからなかったという。
このエピソードにこそ彼女を落とす糸口がある。斉藤が訪れたのは紛れもなく異世界であり、もしかすると現在はその世界を自由に行き来している可能性がある。ということは我々の世界でアイドルと個人的に仲良くなりたいと思い、尾行したり待ち伏せすると、ストーカー法に引っかかってしまう場合があるが、異世界ならば問題なし。つまり、アイドルを落とすならば警察の目が届かない異世界で待ち伏せしアタックするのが一番!
行き方は難しくない。エレベーターで異世界へ行けるもっともスタンダードな方法を試せばいい。まず1人でエレベーターに乗り、4階、2階、6階、2階、10階の順に移動する。この際誰か別の人間が乗って来たら成功しない。そして10階に着いたら、5階を押す。すると若い女性が乗ってくるが決して話しかけてはいけない。ちなみにこの女性は人間ではない。
そこまできたらあとは1階を押すだけ。なぜかエレベーターは降下することなく10階へ上がっていき、異世界の扉が開くことになっている。その世界は人がほとんどいない。しかし逆にいえば、事務所のスタッフも週刊誌の記者もいないため、斉藤を見つけたら安心してデートに誘うことができるのである。近年、スキャンダルを恐れているアイドルは皆、異世界でデートしているとも聞く。そう、いまや異世界こそがクールなデートスポットでありトレンドなのだ。ただ1度、異世界に足を踏み入れてしまったら、戻ってこれない可能性も十分にあるため、その点だけは覚悟してから実践しよう。
(文・柴田慕伊)