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写真を撮られ魂を抜かれた王様

 「写真を撮られると魂を抜かれる」という俗説は日本だけではなく、アメリカ先住民やアボリジニやイスラム教徒など、世界中で語られてきた。写真に初めて接した人々が、未知の物、理解できない技術を前に、怖れに似た不信感を抱いたとしても不思議はない。だが、それは本当に単なる俗説なのだろうか。

 アラビア半島諸国では珍しく共和制をとるイエメンが王制だった頃、イマーム・ヤフヤー(1869〜1948)という国王が在位していた。しかし、イエメンの人々はヤフヤー王の顔を知らずにいた。何世紀も前の話ではない。60数年前のことだ。それは、幼少期に有名な占い師から「写真を撮られると不慮の死を遂げる」と予言されたヤフヤー王が、徹底して写真を撮らせなかったことによる。

 ある時、一人のイタリア人画家が、ヤフヤー王との面会を許可された。面会後、イタリア人画家は直ちに記憶をフル稼働させ、ヤフヤー王の肖像画を描きあげてしまった。肖像画はアメリカ人作家リプレーの手に渡った。世界の不思議な事件や奇妙な風習を読み物や漫画で発表し、大人気だったリプレーは新聞に連載中のコラムに「イエメンの国王は、写真を撮られると死ぬと信じているため、国民は国王の顔を知らない」という記事を書き、肖像画を掲載した。人々が記事を読み肖像画を目にしたこの日、イエメンでクーデターが起きた。偶然なのか予言が当たったのかはわからない。
 ヤフヤー王は反乱部隊により、暗殺された。

 ヤフヤー王は、直接写真を撮られたわけではない。肖像画の写真を撮っただけだ。時に、写真は肖像画を通してまで、魂を抜き取るパワーがあるのかも知れない。
(注:イマームはイスラム教指導者を指す)

七海かりん(山口敏太郎事務所)

山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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