私はどうしたのだろう。そうだ、夢をみていたんだ。夢の中で怪鳥にさらわれたんだ。それにしても、ここがどこだか、わからない。どうしよう。
そうだ、夢の中だから、自分で想像しちゃえばよいのだ。目が開かなくても、自分で風景を考えちゃえばよいのだ。それなら、私は今、山奥の広場にいる。後ろ手に縛り付けられている。目の前では、野蛮な男たちがたき火をしている。情景が見えてきた。
私はやっぱり木に縛り付けられていた。胸に縄が食い込んでくる。きっと野蛮な男たちに縛られたんだ。けど、おかしい。私はエジプトの女王様みたいな飾りを身につけていた。パジャマはなくなっていた。ほとんど裸同然だ。
体をよじってみたけど、縄から抜けられない。髪の毛の間から、汗が落ちてきた。まぶたの横を垂れていく。汗をぬぐいたい。でも、体を動かせない。両手は背中に回されている。お腹にも、足首にも、縄が食い込んでくる。どうしてこんなにきつく縛られたのだろう。それに体をよじってばかりいると、男たちに気づかれてしまう。
「おい、女が気がついたみたいだぜ」
ほら、気づかれた。
「お前、どんなにもだえたって、その縄からは抜けられないよ」
きっと、あの野蛮な男が縛ったんだ。
「なあ、このままこいつを城に連れて行くだけなんて、なんだか、もったいなくないか」
私はどうされるのだろう。
「そうだな、城へ連れて行く前に、俺たちで、しばらく楽しまねえか」
どうしよう。私、襲われちゃう。
逃げなきゃ。けど、縄がきつい。目も開かない。こんなに体を動かそうとしているのに、気持ちがあせるばかりで、体がいうことをきいてくれない。なんでだろう。汗が顔じゅうを流れていく。
「そうだな。俺たちでたっぷり楽しんだって、ばちは当たらねえ」
どうしよう。逃げなきゃ。でも、体を動かせない。
(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)