だが、課題もある。ラミレス監督も開幕当初から「左ピッチャーが打てれば」と話していたように、対左ピッチャーとの打率は.190と低打率にあえぐ。しかし、首位争いの終盤戦、負けられない戦いの中での9月4日のタイガース戦では、6回に苦手の左腕・島本浩也の初球フォークボールを、泳ぎ気味ながらバットコントロールで拾いタイムリーツーベースを放ち、チームに勢いを付けた。さらに、1点ビハインドの8回に、今シーズン1本もヒットを打てていないジョンソンから、「入ってくれーと思って走った」と明かすレフトオーバーの同点ホームラン。結果延長10回、筒香のホームランでサヨナラ勝利を収めたゲームに、大きく貢献した。
2016年のドラフト9位、全体の84番目に名前が呼ばれた男・佐野恵太。明治大学の先輩・当時の高田繁GMの「打てる打者」が欲しいとの期待にしっかりと応えている。3日の落雷の恐れのために中止となったゲームでは、雨の中、球場のBGMに合わせてダンスを披露し、ガッカリしていたファンへ向けて笑顔を届けた佐野は、連日のヒーローといっても過言ではない。
首位・ジャイアンツとのゲーム差は2.5。逆転優勝へ向け得点圏打率.342と、無類の勝負強さを誇る44番の豪快なスイングが、セ界をあっと驚かせる。
取材・文 ・写真/ 萩原孝弘