この日、第8話の放送終盤にて、戦国時代の風景が映るシーンがあるのだが、なんと、その道には明らかにトラックが通った轍(車が通った跡)が映り込んでいたのである。
ネットでは、「いいシーンなのに台無し」「この時代にもトラックがあったのか?」と一部で話題になった。
さて、この手の「時代劇に映りこんではいけないもの」が映った放送事故は、最近はCGの発達などでキレイさっぱり消すことが可能なものの、昭和から平成中盤までは、近代的な建物は「極力映らないよう」配慮していた。しかし、それでも映り込むことはあり、『水戸黄門』(TBS系)では、電柱が映り込んだり、飛行機雲が映り込んでしまったというパターンは少なくない。
また、2016年に放送されたNHK大河ドラマ『真田丸』は、予告編にて登場した赤ん坊に、戦国時代にはないはずの紙オムツ「パンパース」を着込んだ姿が映り込んだり(なお、この紙おむつは本放送ではCG処理で消されている)、公式ホームページの写真にバミリテープ(映像業界で立ち位置を確認する際に使用されるテープ)が映り込んでいたり、その手の放送事故が少なくなかった時代劇として知られている。
なお、この「近代的な道具は映り込んではいけない」というお約束をうまく活用したのが、昭和の大ヒット時代劇「必殺シリーズ」(テレビ朝日系)の、のスペシャル版『必殺忠臣蔵』(1987年放送)である。なんと、この作品では、元禄時代(1688年~1704年)にも拘わらず、当時の飛脚の超人的な脚力を表現するために、新幹線が飛脚と並走するシーンが描かれたのである。
もっとも「必殺シリーズ」は、演出の一つとして、バズーカ砲やレーザー兵器、潜水艦なども登場する時代劇であり、一概には言えないかもしれないが、時代劇の特徴をうまく突いた秀逸な演出と言えよう。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)