海外ニュースサイト『The Guardian』は2019年5月1日、フィリピン・ルソン島にあるビナロナン村で、ゴシップを禁止する法律が定められたと報じた。同記事によると、ビナロナン村では以前から金銭関係や異性関係の噂話や悪口を言う人が後を絶たず、小さな村ということもあり、噂はすぐに広まっていたそうだ。噂話からトラブルが生じて村を出てしまう人も多く、問題が深刻化したため、今回、村長が村内でのゴシップを禁止すると決めた。違反した場合は200ペソ(約422円)の罰金および3時間の社会奉仕活動が、違反を繰り返す者には最大1000ペソ(約2100円)と8時間の社会奉仕活動が科せられるという。
村長は同記事のインタビューに対し「ゴシップを禁止することは村の生活を守ることにもつながる。私は、この村が安全で安心な場所だと示したい」と語っている。
このニュースが世界に広がると、ネット上では「とてもいい対策。噂話や悪口はいい結果を招かない」「村に限らず、どこでも悪口がなくなれば確かに住みやすくなりそう」と、賛同の声が挙がる一方で、「法的に強要されるのはどうかと思う」「愚策の始まり」など法律に懐疑的な声もあった。
フィリピンでは、特に農村部で噂話や悪口によるトラブルが絶えず、若者が都市部に流出していることが問題視されているようだ。海外ニュースサイト『The National』は5月1日、フィリピンの7つの村がゴシップを禁止する法律を検討中であると報告した。同記事によると、ビナロナン村の例を参考にしたもので、村を住みやすい社会にすることが目的であるという。
さらに現地からはフィリピンの農村部で暮らすことに関して以下のような声も挙がっている。
「フィリピンの農村部の多くは、共同で生活をしているという意識が高く、少しのトラブルで村から去ることを余儀なくされる人もいます。例えば、結婚式など村で盛大に行われる行事の準備を積極的に手伝わなければ村八分にされることもありますし、離婚を嫌う村では離婚歴がある家族が村から追い出されることもあるようです。どの村でも共通して言えることは、昔からその地に住む重鎮とのつながりが最も大切だということでしょう。重鎮に嫌われれば村人も全員、敵になるので、重鎮のご機嫌を取ることが重要です。今、フィリピンに移住する日本人は多いですが、農村部に15年住んでいてもいまだに受け入れられていない日本人もいます。基本的に閉鎖的なので、彼らのコミュニティに溶け込むことはなかなか難しそうです」(フィリピン在住歴のある日本人男性)
日本でも村に移住した家族が、村人から受け入れてもらえず、村八分にされたという話は少なくはない。住民が少ない地域では噂話や悪口は娯楽の一つとなりやすいのかもしれない。しかしせっかく田舎での生活が注目され、移住者が増えているのに、不快に思う人がいる以上、なんらかの対策を取らなければ今後、住人がどんどん離れていくことも予想されるだろう。今回のフィリピンの法律は日本にとっても他人事ではないのかもしれない。