期待の3年目、今村猛がフリー打撃に登板したのは2月8日。当人は「この時期にしては良かった」と手応えを語っていたそうだが、「今季は救援にまわる」との情報も現地では聞かれた。この今村と青木高広が広島投手陣のキーマンになるだろう。青木は昨季、セットアッパーとして76試合に登板した。貴重な左の中継ぎエースであり、投球練習を見た限りでは、昨季の登板過多の疲れも感じさせない。この青木の負担を今村が軽減できれば、守護神・サファテに託す継投策も確立する。昨季チーム最多の13勝を挙げたバリントンもハイペースで仕上がっている。昨年9月にヘルニアの手術で戦線を離脱したサファテの出遅れも心配されたが、守備練習でも軽快な動きを見せており、開幕には十分間に合いそうだ。大竹寛はスロー調整だったが、野村祐が先発ローテーションに入ってくると、面白くなる。前田健太、バリントン、福井優也、野村祐…。野村監督も人材難で頭を抱えることはなくなるだろう。
野手陣でも、外国人選手の存在が光っていた。ニック・スタビノア外野手だ。1日の『ランチ特打』で柵越えを連発し、スポーツ新聞を賑わせたが、実際に見てみると、バットを軽く振っていた。パワーではなく、ミート力で飛ばすタイプである。バットを構えた位置も高くない。一般論として、身体に近い箇所でスイングするタイプは「変化球の多い日本球界に適応できる」という。ニックもそれに近いバッターである。おそらく、3番は廣瀬純、4番は栗原健太の打順になるだろう。このニックと2季目のバーデンが5番、6番に入り、昨年ブレークした丸佳浩を7番に下げられるのなら、チーム得点力は確実にアップするはずだ。
守備練習で光っていたのは、ドラフト2位の菊池涼介だ(中京学院大)。ショートの深いところからも一塁へ鋭いスローイングを見せていた。昨季、故障に泣いた梵英心もいい動きをしていたが、菊池は守備範囲も広い。菊池、梵の正遊撃手争いが熾烈を極めれば、三塁が予定されているバーデン、二塁・東出輝裕のどちらかを蹴落として「両方を使う」なんて事態にも発展するかもしれない。外野の土生翔平(ドラフト4位=早稲田大)もバットでアピールしていた。大学4年時は打撃不振だったので「プロ1年目は苦労する」とも思われたが、実戦形式の打撃練習でもセンター中心に鋭い打球を飛ばしていた。
外国人選手、野村祐、新人野手2人、育成の池ノ内。今季の広島は“台風の目”になりそうである。