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徹底検証・徳川埋蔵金の真実 トレジャーハンター・八重野充弘 第14回 金山の奥に隠された千両箱(前編)

 1992年、群馬県内各地から高橋喜久雄のもとに寄せられたさまざまな埋蔵金情報のうち、最も信ぴょう性が高いと思われたのが、金山の廃坑跡に隠されたとみられる16個の千両箱である。高橋と筆者が協力して調査に着手して既に23年、6年前にはターゲットを手中に収める1歩手前までいったのだが、いろいろな事情があって、最終局面で足踏みをする状態が現在も続いている。

 情報源は利根郡片品村に住む萩原徴(当時72歳)。若いころは炭焼きなどの山仕事に従事したり温泉を掘ったりしていたそうで、自宅にも源泉を持ち、立派なヒノキの風呂があったが、謎の部分も多い不思議な人物だった。
 彼は、旧沼田街道沿いに伝わる幕末の目撃談や、隠された財宝に関する伝承、過去の探索話、徳川幕府御用金が隠された場所と思われる昔の金山跡のことなどについて語ってくれた。しかし断片的で脈絡がなく、また、人から聞いた話なのか自身の体験談なのかはっきりしない部分があった。主な内容はおおよそ次の通りだ。

 ◇慶応4年(1868年)の3月、片品の中心地鎌田付近で、千両箱と思われる木の箱を2個ずつ振り分けに背負わされた牛8頭が目撃された。
 ◇「おじうた向こうには宝がある。赤城財宝の一部」という言い伝えがある。「おじうた」は「宇条田峠」のことで、その向こうというと同村花咲地区か、その北方の金山跡のある場所を示すと思われる。
 ◇昭和30年代に山仕事仲間が「山で大変なものを見つけた。もうすぐ大金持ちになる」と口走り、直後に病気で死去。その男は、山中で文字と記号が彫られた岩を発見したといい、その写しが残されていた。それには、「子方へ入」という文字と、三つの山と滝、鉱山記号のようなものが書かれていた。

 萩原翁は、われわれにどうしても見てほしい場所があると言った。案内されたのは、400年以上前に甲斐の武田氏によって発見されたという『金井沢金山』の跡だった。
 道なき道を沢沿いに約1時間半。着いたところは何もない山の斜面で、そこに金山の入り口があり、上から崩れてきた土砂でふさがれているといわれても、にわかには信じることができない。
 ただ、少し離れた場所に屋根と台座が分離した石宮があり、台座には「上州金井沢金山」の名と「寛保二歳(1742年)」の年号が刻まれていたし、屋根の破風の部分に「金」の文字がくっきりと浮き彫りにされていた。
 また、沢沿いに10メートル四方ほどの平坦な場所があり、石臼のかけらがいくつか散乱している様子から、鉱石を粉砕し、沢で洗って金を取り出す荒選鉱の作業場だったことは容易に想像がつく。

 後に『片品村史』で知ったのだが、金井沢金山は1573年ごろ甲斐の武田氏によって発見されている。古文書も多数残されており、場所によっては粗鉱1トン中に100グラム以上の金が含まれていたとあるから、相当優秀な金山だったようだ。ただ、最も新しい記録は元文年間のもので、270年ほど前には閉山になったと思われる。となると、幕末には完全に無人化していたはずだ。
 なお村史の最後にはその場所について、「恐らく今日木や草の茂るにまかせてその跡すら発見に困難であろう」と書かれている。ところが萩原翁は若いころからその場所を知っていて、かつては入り口が開いていたので中に入ることができたのだという。

 坑口があるという斜面は北を向いていた。途中には女滝という滝があり、そこから三つの山が重なって見える。どうやら岩絵は、この場所を示しているようだ。
 同年秋に2度現地へ足を運んだが、2度目のときはそこに金山跡があることをわれわれは確信していた。しかし、あまりにも困難なことが多かった。アクセス路の最大の難関は女滝の脇の切り立った崖で、50メートルばかりよじ登らなければならず、そのため両手をあけておく必要がある。道具を運ぶのさえままならない。それでもショベルやツルハシを背中に結わえ付けて、何とか運び上げることに成功した。

 手探りの状態で斜面の掘削を試みる。時々わずかな隙間が開くものの、上方からひっきりなしに落ちてくる土砂を防ぐ方法はない。そのまま続けてもムダだと判断し、以来14年間、坑口を開けることをほとんど諦めていた。
 しかし、2007年に再挑戦の機会がやってきた。その前年、萩原翁が86歳で他界したことは知っていたが、高橋のもとへ驚くべき遺言が伝えられていたのである。
(続く)

八重野充弘(やえのみつひろ)=1947年熊本市生まれ。日本各地に眠る埋蔵金を求め、全国を駆け回って40年を誇るトレジャーハンターの第一人者。1978年『日本トレジャーハンティングクラブ』を結成し代表を務める。作家・科学ジャーナリスト。

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