国勢調査は、日本国内に住むすべての人と世帯(外国人を含む)が対象で、今回が22回目となる。調査への回答は法律で義務付けられており、回答しない場合は罰則が科される可能性がある。国の有識者会議メンバーで、明治大学の加藤久和教授は次のように協力を呼びかける。
「国の将来を決める基礎的なデータになるし、自治体もこれを基に計画を立てる。マイナンバーは政府による使い方が限られており、国勢調査では個々のデータ(住所、電話番号、世帯構成、勤務先、年収など)をひも付けていくことができる」と語る。
加藤教授のコメントを解説すると、国や自治体は国民一人ひとりのデータを、役所ごとに必要なデータだけ管理している。例えば、市・区役所は住所や世帯構成、戸籍関係などを管理し、税務署は年収・所得や資産、年金は日本年金機構だ。国民健康保険は市区町村が管理しているが、会社員が加入している健康保険は健康保険組合や協会けんぽが管轄。要するにデータの所在がバラバラで、これを一体的に活用する仕組みは今のところない。
国勢調査の是非については番組コメンテーターの間でも意見が分かれた。結城東輝弁護士は必要との立場だ。
「選挙とは違った形で投票する行為。自分というものが国に可視化されて政策に反映される。マイナンバーは健康保険証をひも付けるだけでも国民の抵抗感はあれだけ大きかった。だとすれば、国勢調査も今のところ仕方がない」
一方、レギュラーコメンテーターの玉川徹氏はその必要性に懐疑的な立場だ。
「1000億円ものコストがかかるし、何のためにマイナンバーを導入しているのか。マイナンバーで分からないことは勤務先くらい。法律的には各データのひも付けは可能だとされている。目的があってデータをひも付けした場合は公表すればいい」
国勢調査は対面での受け渡しが原則となっている。国や自治体が持っているデータの基本は住民票がベースになっている。しかし、住民票があるところに実際には住んでいないケースが多々ある。
地方から東京に出てきている大学生はその典型だ。よって、国勢調査ではそうした実態を把握することができる。
「能登半島地震のような大きな震災では住民基本台帳をベースに施策を考えるが、実際に住んでいるのかどうかを行政が把握しておくのは大切」(加藤教授)
賛成派の結城氏と懐疑派の玉川氏、意見が一致したのは、政府が国民の個人データやプライバシーを扱う以上、国勢調査は政府への信頼がなければ成り立たないということ。政府は信頼を得る努力をすべきということだ。玉川氏は、マイナンバーのシステムを透明性の高いものに改善していけば国勢調査は必要なくなるのではないかと提起した。