今や、星の数ほどあるプロレス団体。かつて、プロレス団体は東京を拠点とすのが、常であった。だが、昨今では東北を本拠にするみちのくプロレスや、大阪を本拠にする大阪プロレス等、ローカル団体が増えてきた。そんななかで、異彩を放つのが、沖縄県那覇市を拠点とする沖縄プロレスだ。
沖縄プロは08年7月に、スペル・デルフィンが社長となって旗揚げした。
デルフィンは、99年に所属していたみちのくプロから独立し、大阪プロを旗揚げ。同プロが大阪の繁華街・道頓堀に定着するのを見届けた上で、新たな拠点として沖縄に着目。夫人でありタレントの早坂好恵さんの出身地である縁もあり、沖縄県のベンチャービジネスサポート事業に応募。これが採択され、沖縄県産業振興公社のバックアップを受け、那覇市随一の繁華街・国際通りのメーンストリートに居を構えた。
正直いって、沖縄ではプロレス文化はなじみが薄い。長年にわたって日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノアを中継してきた日本テレビの系列局が沖縄にはない。日本プロレス時代から、アントニオ猪木中心の「ワールドプロレスリング」を今でも中継するテレビ朝日系列の琉球朝日放送は歴史が浅い。プロレス興行が行なわれるのも、年に数えるほど。本土では力道山(故人)がつくったプロレスは、テレビ中継を通じ、お茶の間の文化として存在していた。それが、ジャイアント馬場(故人)や、猪木に受け継がれても、ゴールデンタイムで高視聴率をマークするジャンルであったのだ。しかし、沖縄にはそんなバックボーンがない。それだけに、プロレス文化が根付くかどうか、不安視されていた。
だが、デルフィンは言う。「沖縄は日本でも有数の観光地。大阪で成功したモデルケースもある。観光客をうまく取り込めば、成功すると確信しています」。
コンセプトは「家族で楽しめるエンターテインメントプロレス」。デルフィンは別として、他の所属選手は、怪人ハブ男、シーサー王、ミル・マングース、めんそ〜れ親父、グルクン・ダイバー、エイサー8ら、全員が沖縄にゆかりあるキャラクターマスクマン。これが、地元客にも観光客にも、受け入れられやすい。リング上はお笑いあり、ハードなプロレスあり。ややこしいストーリー展開もなく、流血戦もないため、まさに家族で楽しめ、プロレス初観戦の客にも好評な試合だ。選手は年間300試合以上をこなしているとあって、試合のクオリティーも高いのだ。
当初は地元客が多かった同プロだが、次第に観光客の来場が増え始め、緩やかな右肩上がりで、企業として成長を遂げている。
この7月には旗揚げ2周年を迎え、9月には初の本土上陸も敢行。大阪、神戸、徳島・阿南の3都市でツアーを行なった。
通常は、国際通りのデルフィンアリーナで興行を打つが、最近では“出張プロレス”のオファーも多くなり、スーパーJUSCOでは、頻繁にイベントプロレスを開催。昨年11月には、沖縄本島から遠く離れた石垣島に進出。さる11月20日には、TBS系列で放送中の「紳助社長のプロデュース大作戦」で、人気沸騰の観光地となった宮古島に初進出したばかり。今後も、お呼ばれは増えそうで、来年には東京初上陸も検討されているもよう。
入場料金も通常のプロレス興行より格安な設定となっており、沖縄を旅行する機会があれば、一度、観戦してみて損はないだろう。
(文・写真=最強プロレスサイトBATTLENET ミカエル・コバタ)
<沖縄プロレス観戦情報>
●所在地 沖縄県那覇市松尾1-3-1エスプリコートビル5階
●交通 那覇空港からゆいれーる(モノレール)で県庁前駅下車(所要12分)。徒歩3分。
●開催時間 月〜土曜=20時開始、日曜=18時開始。水曜=定休。祝日は要確認。
※スケジュールは変更の場合があるため、要確認。
●入場料金 一般=3500円、中高生=2500円、小学生=1500円。うちなんちゅ地元在住者は1000円割引(要身分証)。
●問い合わせ 沖縄プロレス
http://okinawa-prowres.jp/