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ミニコミ誌と同人誌、どう違うの?

 知人から「ミニコミ誌」と「同人誌」とはどう違うのか、という質問を受けた。記者がミニコミ誌や同人誌のイベントを取材することが多いため聞いたようだ。

 ミニコミという言葉は60年ころに生まれ、70年代に浸透した。60年安保、ベトナム反戦運動、70年安保らが影響しているといわれるが、公害問題や、炭坑争議や、PTA活動の活発化など、社会全体の大きなうねりの中から生み出された言葉なのかもしれない。

 同人とは、志を同じくする者、あるいは、志を同じくする者たちのグループを指す。「文芸同人誌」には一世紀以上の歴史があり、短歌や俳句を加えればもっとさかのぼる。

 かつては、「ミニコミ誌」といえば「社会運動の雑誌」を、「同人誌」といえば「文芸同人誌」を指した。

 1972年10月16日の読売新聞都民版に、新宿の歩行者天国で開始された「ミニコミ市」の記事が掲載されている。記事タイトルは「百家争鳴のミニコミ市・公害、反戦etc」。書き出しは「マスコミの向こうを張ったミニコミは、いまやちょっとしたブーム。十五日、歩行者天国の新宿大通りに百メートルにわたってミニコミ市が立ち並び、歩行者の足をとめた」となっている。

 「ミニコミ誌」は、そもそもメディアなので、情報らを不特定多数に対して発することを前提としている。70年代以降、屋外から屋内へ場所を移し、発信されるようになる。ミニコミ誌を扱う店舗が全国に広がり、サブカルチャーとしてのタウン誌が隆盛する(タウン誌自体は古くからあった。『季刊日本橋』は1935年創刊)。

 また、発信だけではなく、「ミニコミ誌」を管理・保管するための動きも出てくる。1976年に「日本ミニコミ・同人誌図書館」が作られ、78年に移転オープンしている。館長の方は、「苦悩舎」というミニコミ書店を経て、図書館を設立した。家庭用ヴィデオカメラの普及や、FM・インターネットなどのインフラの浸透をへて、現在では、「ミニコミ誌」という言葉が適用される範囲が多様化し、活用・運営方法も細分化している。

 いっぽうで、「同人誌」も、細分化する「ミニコミ誌」と同様に、まんが同人誌の隆盛など多様化していく。1977年に「同人誌マーケット−−同人誌・ミニコミ即売会」が大田区産業会館(東京都)で開催されている。「同人誌・ミニコミフェア」として続いていく。「第4回同人誌・ミニコミフェア」の募集要項には、「マンガを書きながら売る風景も」という説明文つきで会場風景写真が紹介されている。また、「同人誌・ミニコミフェアは、ファンジンとしての文芸、漫画同人誌、ミニコミ、タウン誌、サークル誌、個人誌、詩集等の発行者、グループが集って、本の展示即売会を通して、制作者と読者、制作者同志の交流のきっかけを作る場所なのです」と記されている。「ファンジン」とは、「ファン(愛好者)」と「マガジン(雑誌)」を足して作られた言葉のようで、同人誌そのものを指す場合もあったという。

 募集要項の中で、わざわざ、「ファンジンとしての」とただし書きをした理由は、文芸同人誌には仲間内の回覧物という伝統があるためと思われる。コピー機などがない時代、たとえば、明治・大正のころ、書いた小説を仲間に読ませたいと思ったら、一般的には、原本を渡すか筆写するかしか方法がない。複数の仲間にいっぺんに読ませたいと思えば、人数分を筆写するか文芸同人誌を作るかしかなかった。

 「ミニコミ・同人誌図書館」では「ミニコミ」が先にきて、「同人誌・ミニコミフェア」では「同人誌」が先にきている。その理由はわからないが、前者の設立者が「ミニコミ誌」の人間で、後者の主催者が「文芸同人誌」出身だからかもしれない。(竹内みちまろ)

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