ベラトールのスーパースターが、初めての日本を堪能するかのような衝撃的な試合を繰り広げる中、メインイベントでは、ヘビー級のユニファイドルール(5分3R)で、PRIDEでも活躍した“皇帝”エメリヤーエンコ・ヒョードルの日本ラストマッチが行われた。対戦相手はこちらもPRIDEで人気の高かったクイントン・“ランペイジ”・ジャクソン。PRIDE時代は階級が違ったため、実現しなかったドリームマッチである。
この試合は大晦日にフジテレビ系列で全国放送された。ランペイジがPRIDEのテーマで入場し、この試合の英語アナウンスをPRIDE、RIZINでおなじみのレニー・ハートが務めるなど、往年のファンにはたまらない演出。しかし、試合はランペイジがヒョードル相手にほぼ何もできぬまま1R2分44秒、頭部へのパンチでKO負け。結果だけ見ればヒョードルが日本で有終の美を飾ったことになるが、期待値が高すぎたのか消化不良な面が否めなかった。
大会終了後、RIZINの榊原信行CEOは、「どっちかっていうと、あまりノスタルジックな気持ちは僕はヒョードルに対してもPRIDEに対してもなくてですね、ホントに“いま”を生きているというか、まあ、確認作業にはなりました」という。
榊原CEOは昔を振り返った。「やっぱり、15年前にタイムスリップしてPRIDEのリングでクイントン・ランペイジ・ジャクソンとエメリヤーエンコ・ヒョードルが今から15年若返って向き合ってたら、こんなに“ぬるい空気”にならないだろうなって。もっと殺伐とした、ホントに僕らが見たい、僕らが見せたかったものが見せられたのになあということに気付く機会になって、これじゃダメだ。これでは未来はないと」とバッサリ。榊原CEOはPRIDEの創設メンバーのひとりであり、社長も務めていただけに、この試合への思い入れはあったはずだが、評価は厳しかった。
榊原CEOは「ひとつの句読点としてはいいんですよ。この2人をきれいな形で日本でもう一回、彼らが自分が全てを手に入れることになった原点の国で、さいたまスーパーアリーナで、彼らのメモリアルなイベントにもなるし、その当時にいろんな原体験を持ったファンの確認作業というかですね、ひとつの時代を終えるための儀式としては良かったと思います」とした。
その上で、榊原CEOは後進の育成に力を入れると強調。「今のファンが求める刺激には全く足りてないので、未来を創るにはやはり今の、まだ見ぬ第2、第3のヒョードル、クイントンと、彼らの15年前の躍動感をリング上なりケージ内で作り出せないとこのスポーツの未来はないかなということをシビアに思って、『こうなるんだよな』って感じでした。僕自身は」
榊原CEOにとっては、今後RIZINを続けていく上で“反面教師”の試合になったようだ。なお、ベラトールとは今後も交流を続けて、今年も日本開催ができればいいとの考えも明らかにしている。「ベラトールのチームとRIZINのチームが一緒に大会を作れたのは勉強になった」とのこと。また、ヒョードルはもちろん、ミルコ・クロコップの引退セレモニーも「検討していきたい」という。ただし、メモリアルの試合を今後乱発させない方向であるのは確かだろう。
(どら増田)