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キャバ嬢列伝〜艶やかな波乱万丈(1) 傷を赤い糸に変えた女

 不況の世の中をたくましく生きるキャバ嬢の生き様にこそ、人生の教訓が含まれている。

 人生観や恋愛観、キャバ嬢になった理由や苦労話など、彼女たちの波乱の人生を紹介し、社会の縮図ともいえるお水の世界から現代に生きる人へのアドバイスを引き出す新シリーズ。

 中学、高校と学生時代、同級生から執拗な虐めを受け続けたたYさんには、自傷の跡があり、何度も何度もリストカットを繰り返した過去がある。無能で陰気な自分なんか早くこの世から消えてしまえば良いと思っていたのだ。
 だが、今ではその忌まわしい過去から完全に立ち直り、今では他店にまでも名前が聞こえる人気のキャバ嬢に成り上がった。その頂点への道は平坦でなかった。ある逆転の発想が彼女を変えたのだ。

 その転機は、開き直りから生まれたという。かつては手首の傷を服やメイクで隠していたが、どうしても表情に暗さが出てしまい、あまり人気のあるキャバ嬢ではなかった。昨年からこの手首の傷をあえて隠すことをしなくなった。それは、良い意味での開き直りであり、ありのままの自分と己の過去をさらけ出すことで、お客さまに自分を知ってもらいたかったからだ。

 最初は驚くお客さまも、その傷に隠された彼女の学生時代の虐め体験を聞くにつれ、熱心なお客さまに変わってくれた。心からの発言は、確実にお客さまの感動を巻き起こしたのだ。
 特に彼女と同じように、職場や学校での虐め体験のあるお客さまは、共感してくれたうえ、上質で太いお客さまになってくれた。こうして、彼女は自分の手首の傷を、暗い過去からお客さまとの赤い糸に変えた。

 明るく笑いながら、彼女は、自分の傷を指さす。
 「この傷は自分にとって思い出したくない過去だったけど、今は人気の証しかな。マイナスな過去もプラスに方向転換する。そうやって考え直したら、現在の自分があるんだよね」
 彼女はこれからも手首の傷を隠さない。

(和田大輔/山口敏太郎事務所)

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