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連載ラノベ 夢ごこち(3)

 吉原君が、足もとを見ながら、聞いてきた。
 「もしかして、早瀬さん、こういう話、好きなの」

 こういう話って、歴史のこと、言っているのかな。
 「歴史のこと」
 「違う。魔道とか、魔術とか、おどろおどろしい話」

 別に好きなわけじゃないけど、せっかく吉原君が話してくれているから。
 「そういうわけでも、ないと思う」
 「じゃあ、どんな話が好きなの」

 吉原君に、急に、見つめられた。どうしたのだろう。いきなりこんな聞き方をしてきたこと、なかったのに。
 「なんで」
 「早瀬さん、僕といるとき、いつも、つまらなそうにしてる」

 私、そんなふうに見えるんだ。そんなこと、ないのに。
 「そんなこと、ないと思う」

 吉原君の方を少し見てから、答えた。
 「ほんと」

 ほんとだよ。
 「うん」

 吉原君は、それ以上は何も言ってこなくて、がけ際の道を並んで歩いた。

 私は吉原君のことが好き。けど、うまくしゃべれない。放課後にいつも教室に残っている女の子たちや、運動部をやっている人たちは、男の子と笑いながら話している。いつも何をしゃべっているのか気になるけど、休み時間に聞こえてくる話だと、ほんとうに、なんでもないことを口にしている。

 けど、みんな、楽しそう。

 がけ寄りを歩く吉原君が、横目で私のことを気にしている。でも、どうしたんだろう。いつもは顔を見てくれるのに、今日は、私の体ばかりを見ている。

 今日の吉原君、うつむいて、まじめな顔をする。悩みごとでもあるのかな。

 吉原君が立ち止まった。
 「何だろう、これ」

 見ると、道の脇に、お社があった。

 お社は真四角で、高床になっている。ちゃんと回廊もある。でも、小さい。中の部屋は、あぐらをかいた大人が一人、入ることができるくらいの広さしかないと思う。

 ほんとうに、何なのだろう。
 「わかんない」

 柱は朱が塗られている。けど、ほとんど、はげている。落ち葉もたまっている。誰も掃除をしていないんだ。

 でも、扉には、ちゃんと、お札がはられている。

(つづく/竹内みちまろ)

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