2年交際した彼の実家へ、今年の1月、初めて行ったんです。実家に招いてくれたということは、そろそろ結婚も考えてくれているだろうし、相手のご両親も良い人で、とても幸せな気持ちでした。
それで実家を訪れた2日目、ご両親が近くで自営業をしているとのことで、夕方ごろに彼は、閉店の手伝いに行ってくると出て行きました。なので夜まで、家には私1人。彼は私が退屈しないように、大量の本が並ぶ書斎などを案内してくれて、「自由に読んでいいからね」と言ってくれました。それで色々と本を抜き取っていると、ある本棚だけ背面がなく、向こう側にふすまがあることに気がついたんです。本棚が邪魔で部屋に入ることはできないのですが、手を伸ばせば開けることができそうでした。
なんとなく退屈していた私は、興味本位でそのドアを開けてみることにしました。するとその部屋は人が1人入れるぐらいの狭い部屋で、天井も低かったです。物などは特に何も置かれていなかったのですが、天井をよく見ると、なぜか画鋲のようなもので刺した穴が、無数にびっしりと開いていました。ですが画鋲は見当たりません。
さらに血液か、または赤の絵の具なのか、「たすけて」と書かれた赤い文字も天井に書かれていたのです。私はそのあまりに不気味な部屋に、すぐに扉を閉め、バレないよう本も元の位置に戻しました。
その後、私は何事もなかったかのように相手のご家族と過ごし、東京に帰宅。彼には、そのことは話していません。彼には全く不満がないですし、一緒に過ごしていておかしいと思ったこともないです。なのでこのまま彼とは結婚することになると思いますが、あの部屋が何だったのか、たまに思い出すと怖くなります。
取材/構成・篠田エレナ
写真・Amanjeev