頑固店主の店では、「お客様ファースト」なんてものはなく、店主のいうことは絶対。客は従うしかなかった。従わない場合は、退店や出禁となっただろう。令和になった今では絶滅危惧種だが、こだわりのある店主のいる店ほどそういう傾向にあった。
店によっては残すことも厳禁。「残すなら最初から言え」と怒鳴る店主も少なくなかった。食べ残しに関してはいまも「食べられる量だけ注文してください」というただし書きのある店もある。白米が無料サービスの店でも、食べ残しに関してはこういう措置を取る店が増えつつある。人気店の「鈴の木」では「食べ残したら一発芸をしてもらい、それを撮影してインターネット上に晒す」として2024年に動画をアップし炎上していた。戦後の「もったいない」という価値観が古いとは言わないが、令和のいま、こういう価値観はそぐわなくなってきた。
昨日、たまたま入った某人気店では、水はセルフサービスのためグラスを二つ持って席についたところ「グラスの数が少ないので」と店員がいいながら、グラスの水をシンクに流してしまった。グラスの数が少ないのは知らなかったので申し訳ないとは思うが、いきなり取り上げて捨てるのは乱暴ではないだろうか。他の客がニンニクをひっくり返してしまった際も「いいですよ」とはいうものの、「大丈夫ですか?」「服は汚れなかったですか?」といった客を気遣うそぶりを見せず、人気店のおごりを感じてしまった。

移転する前の店舗は小さく、店主とバイトの2人だった。そのときは接客も良かったが、移転して店舗が広くなってからはオーナーを一度も見かけていない。店を店長やバイトに任せてしまったのだろう。バイトも増えて接客指導も行き届かなくなり、接客を指導できる人がいなくなってしまったのだろうか。飲食店の服装や髪形もゆるくなった店が多く、水を取り上げた店員はキャップからしばった髪がぶら下がっていて、清潔さが感じられない。

お客様ファーストである必要はないが、最低限の接客態度というものがあるのではないか。オーナー不在が、サービスの質の低下につながってしまったのかもしれない。人気店だからと傲慢(ごうまん)になってはいけない。少し前もサービスの白米を残されたラーメン店がX(旧Twitter)に「死んでください本当に」「二度と来るなゴミクズが」と投稿し、大炎上した。人気店であっても、たった一つの行動で炎上するし、客離れにもつながる。「お客様あっての商売」そのことを忘れてはいけない。