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外出自粛中だからGW開けでも五月病とは無縁? むしろリスクは高くなる恐れ

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 政府は4月23日、東京・大阪・兵庫・京都の4都府県に対して、25日から5月11日の期間で緊急事態宣言を発令した。酒類を提供する飲食店や、生活必需品の売り場を除く1000平方メートル以上の大型商業施設に休業を要請するなどして、短期に集中して新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込みたい考えだ。

 5月といえば、ゴールデンウィーク明けに見舞われやすい「五月病」が例年話題になる。昨年や今年のように大型連休中に自粛生活をしなければならない異例の場合では、例年と同じく五月病症状が増えるのだろうか。中には、「外出できず遊びに行けない休日なので、仕事始めに気分の落差が生じない分、五月病にかかりにくいのでは?」と考える人もいるかもしれない。しかし、これには誤解がある。むしろ、大型連休中の自粛生活だからこそ五月病発症のリスクが高くなる恐れがあるのだ。

 そもそも「五月病」は正式な医学名称ではなく、5月ごろに患う適応障害、うつ病、不眠症などの精神疾患をはじめ、集中力が続かない、疲れやすくなった、倦怠感がある、やる気が出ない、気分が落ち込む、強い不安感といった、比較的軽度な気分の不調も含む症状をさす。また、これらの精神面の不調に自覚がなく、頭痛が治らない、目まいがする、肩こりがひどいといった身体症状が出る場合もある。

 五月病の原因は、4月の年度初め前後にたまったストレスや疲労の蓄積によるものだ。例えば、職場や人間関係、生活スタイルが一新するなどの大きな環境の変化に適応するために精神的なエネルギーを必要としたり、繁忙期で心身ともに酷使した場合、ちょうどこの時期に疲れが出やすくなる。また、受験や就職などの大きな目標を達成した後には、急に仕事や勉強に対する意欲を失ってしまう「燃え尽き症候群」の状態に陥ることもある。さらに、4月から5月にかけては季節の変わり目で気温の差が大きく、自律神経が乱れやすくなるなど、身体的にストレスがかかることも大きく関連しているとみられている。

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 また、性格的な面で、几帳面、真面目、責任感が強い、内向的、完璧主義などの特徴を持つ人は、もともとストレスをためやすい傾向があり、五月病にかかるリスクが高い。逆に、ストレス耐性が高い人や、年度初めのストレスをうまく発散・解消ができている場合は、五月病になりにくい。

 本来なら、ゴールデンウィークはたまったストレスを発散・解消できるいい機会といえる。この期間がなければ、ストレスや疲労に伴う心身不調は悪化するだろう。ところが、今回のように、緊急事態宣言による自粛生活とゴールデンウィークが重なった場合は、思うようにストレスを発散・解消できない恐れがある。また、年度初めのストレスに加え、持続的なコロナ禍のストレスもあって、全体的に五月病のリスクが高くなる可能性が否めない。自粛で家にこもりがちというだけでもストレスを感じやすいものだが、運動不足や生活リズムの乱れも引き起こしやすく、ひいては睡眠障害や気分が落ち込んだ状態に陥りやすくなる。人との会話や触れ合いの機会が減れば、それだけストレス発散の機会を失ってしまうことになるだろう。

 こうした緊急事態宣言下で五月病を予防するためには、生活の中での意識的な工夫が必要だ。

 例えば、生活リズムを整えることを意識し、できるだけ昼夜逆転した生活は避けたい。そのためには、午前中から日光を浴びることを心がけ、散歩やほどよい筋トレなど、軽度な運動を取り入れると良い。これらには、心を安定させる効果がある神経伝達物質「セロトニン」の分泌を促す効果があり、五月病の予防に大きな役割を果たす。

 また、趣味に没頭すると快感情をもたらす神経伝達物質「ドーパミン」の分泌が活発になり、仕事や勉強に対する意欲が増し、集中力を高める効果もあるといわれている。あるいは、好きな音楽を聴くことでも同様の効果が得られるようだ。

 悩みがストレスになっている場合は、信頼できる人に聞いてもらうと良い。直に人と会うことが難しい緊急事態宣言下では、電話やビデオ通話が便利だ。悩みの解決とまではいかなくても、一時的にストレスが軽減したり、気持ちを整理することができる。また、問題点を紙に書き出す方法もおすすめだ。

 その他、人や動物との会話やスキンシップなどの心地よい触れ合いや、世話をすること、他人に親切にする行為などは、幸せホルモンとして有名な脳内伝達物質「オキシトシン」の分泌を促し、幸福感や安心感を得られる効果があると言われている。ただし、これもまた感染予防の観点では注意が必要だ。

 緊急事態宣言下のゴールデンウィークでも、限られた範囲の中で自分に合った方法を見つけ、うまくストレスを発散・解消することができれば、五月病を予防することができるはずだ。そして、今後の人生においても高いストレス耐性を身に付けることができるだろう。

文:心理カウンセラー  吉田明日香

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